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つまり、ソウタは、仕込まれていた鉄板をへし折って更にお腹にパンチを打ち込んだ。
しかも、触った瞬間に鉄板に気が付いて手加減をして。そんな神業が出来るソウタは…ものすごく強いのでは。
事の状況にあまりついて行けない私に「オバサン、大丈夫?」彩希さんがクスリと笑い私の腕に手を添えた。
「ソウタの拳はほぼ凶器だもんね。いやあ、いつ見ても惚れる」
「おじさん…それ、褒めてんの?けなしてんの?」
「よくその細腕でそれだけ重いボディーブロー打てるよな…どうなってんの?」
「ちょ、くすぐったいから二の腕、触わんないでよ、カケル!」
「あ、カケルずるい!俺も触る!」
「ミヤビ、お前も調子乗んな…ってカイト、何で顔を撫でてんのよ?!」
…なんか、収集付かない位にソウタが撫で回されてますけど。
いいのかな、これ。
「おじさん擽んな!…ちょっとミヅキちゃん、見てないで何とかしてよ、この人達」
まあ…楽しそうだからいいか。
というか、嬉しそう。
恐らく五人に忘れ去られてるであろう、苦しそうに失神してる榊原に目をやった。
真下と同一人物に会っていた…か。
5人のじゃれ合いを面白そうに見ている真紀子さんに思わず目をやった。
真紀子さん…榊原の話を聞いてどう思ったのだろうか…。
「ミヅキちゃん、聞いてんの?助けろって!」
ソウタが命からがら魔の手から逃れてやってきた。ボサボサになった頭に、乱れたシャツ。もみくちゃにされた感満載の姿に思わず含み笑い。
「…ソウタ、凄い強かったんだね。」
そんな私に「あーもう。」と口を少し尖らせた後、好戦的な目をして口角をきゅっとあげ、イタズラをする子供みたいな笑顔を見せる。
「当たり前です。俺が弱いわけないでしょーが。」
それは…武器にしているであろうあの微笑みなんかよりずっとソウタらしいと思った。
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