最終章

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「もうお昼だしね。時間は取らせないから」 微笑ましい表情を浮かべる社長は、どちらかに断りを入れないところを見ると、どうやら妹尾さんと一緒に話をするらしい。 私達を率いて社長室へ向かうと、先に中へ入った社長は、扉を引いて二人を通した。 「し、失礼いたします」 同い年で気心知れた人と言えど、“社長”からのもてなしに二人とも恐縮しながら身を通す。 社長室は相変わらず雄大な青空を巨大な窓ガラスに抱え、社長の担う重責の偉大さを思わせる。 若干の緊張を覚える私達を回り込み、自席の引き出しから何かを取り出す社長は、目線でデスクまで招く。 二人並んで重厚なデスクの前に立つと、PCディスプレイと電話機だけが載ったそこに、“妹尾隼介様”と丁寧な文字で書かれた茶封筒が差し出された。 見たことのある楷書に、かすかに動揺する。 それを察する妹尾さんが、私を横目にうかがうのがわかった。
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