第1章

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『めいるおをくります』 「携帯のタイトルに書いてあったんだって」 「なにそれ、全然意味不明なんですけど!」 五月(さつき)は一人爆笑しながら、俺の肩を叩く。 そんなに面白いか?と首をひねったが、五月はいつもこんな調子だったなと一人ごちる。 ついでに、爆笑という言葉は一人の人間に対して使う言葉じゃないが、五月には何体かの霊が憑いているから問題ないだろう。 「本文はなんてかいとっと」 興奮するといつもしゃべり方が方言になる。 そこが可愛いけどね。 「ちょっと待って」と言って画面をスクロールさせる。 『やたしはななじゅうねんこのみらいのあなた。おねかいかあります』 なんだこれ?読みにくいし、意味もわからない。まさに意味不明だ。 「もう読むのやめようぜ」 俺が携帯を閉じようとすると 「待って」 いつも、ヘラヘラしている五月が真剣な表情で腕を掴んできた。 「何だよ、イタズラメールだろ。こんなの読んだって時間の無駄だよ」 ちょっときつめに言ったせいか、悲しげな目で見つめながら 「続きを読もう」と言ってきた。 五月は直感が優れている。霊が憑くのもこの不思議な直感力に惹かれているからかもしれない。 「わかった、ごめんな」 頭を軽く撫でて、手を握った。 少し笑顔になった。 親指で↓を押し進める。 『おねかいします。あなたといっしょにいさせてくたさい』 全く意味がわからない。 「返信したら?」 「これに?だいたいなんて返信するんだよ」 何を言ってるのと言わんばかりのキョトンとした顔で 「いいですよって書けばいいじゃん」 「嫌だよ、気持ち悪い」 突然後ろを向き 「そうだよね、気持ち悪いよね」 哀愁を醸し出すその背中に俺は「わかった」と返事をした。 前を向きニコッと微笑む。 結婚したら尻に敷かれるなと幸福な妄想をかき立てながら返信する。 『そばにいていいですよ』 送信 すぐに返信がきた。 『ありかとう。これてやっとかえれます』
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