二十歳までのカウント

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「見てよ、これ。俺にもついに届いたんだよ」  土曜日、高校時代の友人・カズマに呼び出されたシンは、待ち合わせ場所に着くなり携帯画面を見せられた。 「これって、なんだよ」  連日の仕事で疲れて切っていたシンは、今日は一日寝て過ごすつもりだった。なのに急に呼び出されたものだから不機嫌極まりない。鬱陶しそうに画面を見れば、そこには実に簡潔なメールが表示されていた。 「…………能ある鷹は爪を隠す?」 「いやぁ、さすが未来の俺。なかなか気のきいた一文じゃないか」 「いや、意味わかんねぇよ。お前に隠すほどの才能なんてないだろ」  こんなことのために休みに朝早くから呼び出されたかと思うと、嫌みの一つも言いたい。ただ嫌みを言うのも億劫で、シンは無言でカズマの頭をひっぱたいた。  半年後メール。それが届き始めたのは今から一ヶ月前、世間が今年は空梅雨かもしれないと騒いでいるころだった。  半年後の自分からメールが送られてくる。画期的な発明だと大々的にニュースでとりあげられたのはさらに前、年が明けたばかりの頃。その時はタイムマシンだ、時間旅行だとニュースの内容は飛躍していったが、結局のところできるのは半年前にメールが送れるだけ。送れるのは自分から自分宛のみ。文字数は10文字以下。さらに混乱を恐れた国がいろいろ制約をつけた。人生を左右するようなものは禁止、賭け事に関するものは禁止、他人の権利を侵害するものは禁止等々、禁止事項は多岐にわたった。  そして、そのシステムは年末に本格的に始動するとゴールデンウィークに発表され、世間がそんなニュースを忘れかけた梅雨の頃、メールが届き始めた。そう、半年後の年末にシステムが始動し、年末側の人々が半年前の梅雨時期の自分にむけてメールを送り始めたのだ。  だが、なにせ制約が多すぎる。ちょっとでも違反すれば送信されない仕組みらしく、結局送られてくるのは今カズマが見せびらかしているような格言のようなものやエールのようなものばかり。  大したメールは送られてこない。それが、受け取った側の感想だった。
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