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『それで、ヴィーゼルには同じ写真をまた送ってほしいんだ。今度は保存用分に二枚で。もちろん倍額出すよ』
「承知いたしました」
「承知するな!」
『大丈夫だよ。今度は大事に大事にカオルちゃんを見るから』
「大丈夫じゃねえ! 燃やせ! 今すぐ他の写真とまとめて燃やせ!」
パソコンの前でバンッっと手をつき、カオルは前のめりで王子を睨み付ける。
『わわわっ! カオルちゃんのドアップ来た!』
画面の中の王子は、顔を紅潮させて興奮している。
『カオルちゃん! そのままそのまま! うちゅう~』
王子が唇を尖らせて顔を近付けてきた。
「うわっ!」
王子の気持ち悪さに、カオルは思わず手を振り払ってパソコンの向きを変える。画面はヴィーゼルの方を向いた。
「それでは、王子。これにて報告は終了致します。詳細は報告書にて後日、お送り致します」
ヴィーゼルは王子の顔が画面にくっ付く前に、素早く通信を切った。
「ううう。気持ち悪い気持ち悪い」
カオルは全身に立った鳥肌を落ち着かせるように身体をさする。
「さあ、報告は終わりましたし、ケーキを食べましょう」
ヴィーゼルはケーキを食べる用意をいそいそと始める。ヴィーゼルがケーキにナイフを入れようとした時、カオルはケーキをサッとよけて、ヴィーゼルの手が届かないよう持ち上げた。
「ちょっと待てヴィーゼル」
「何をするのですかカオルさん」
ヴィーゼルはナイフを置いてテーブルの上に立ち、カオルの持つケーキに手を伸ばす。が、カオルはさらに上へとケーキを逃がした。
「王子の言っていた、これからもよろしくってどういうことだ」
「その言葉の通りです」
ヴィーゼルは答えながらも、ケーキの下で手を伸ばし続ける。
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