薫とヴィーセル

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 ヴィーゼルはケーキを狙って、さらに激しくぴょんぴょん跳ねる。と、ヴィーゼルの足がテーブルの上に置きっぱなしになっていたパソコンのマウスを蹴った。 『好きだからです!』  急にパソコンから音声が流れた。ヴィーゼルが蹴ったせいで、何かが起動したようだ。 『何よりも誰よりも好きだからです!』  聞き覚えのありすぎる音声に、カオルはピシリと固まる。 「こ、これは……」  顔をギギギとゆっくり動かし、カオルはパソコンを見た。  その隙をついて、ヴィーゼルは大ジャンプでケーキを奪った。そして、床の上に着地したヴィーゼルは、そのままケーキにかぶりつき始める。  それをカオルは止めようとしない。  もはやケーキどころではなかった。 「どういうことだヴィーゼル。この音声は何だ」 「ほれふぁほうほほほふほんふぃはひは」 「飲み込んでから話せ」  ヴィーゼルは口の中のケーキを飲み込み、生クリーム塗れの口で話し始めた。 「それは今日のを録音しました。使えるかなと思いまして」 「何にだ」 「そうですね。あれなんていかがでしょうか。声を録音してアラームにする目覚まし時計。それにこの音声を吹き込めば、王子が高値を付けてくれそうじゃないですか?」 「ふざけるな! 売らせてなるものか!」  カオルはパソコンの前に座り、音声の削除を試みる。 「無駄ですよ」  ヴィーゼルはどこからか五本のUSBを取り出し、指先でパラリと器用に広げて、カオルに見せつけた。 「すでにコピー済みです」 「くっ、くそおおおおおお!」  カオルの嘆きが夜の闇の中にこだました。  これからも魔法少女カオルの受難は続くのである。  end
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