彼のそば

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「今日から新発売なんだってさ。なんか可愛いから、つい買っちゃったんだけど、おれ、他にもパン買い過ぎちゃったからさ。中身、チョコクリームだけど、嫌じゃなければあげるよ」 「へえ、本当可愛いな。チョコクリームなら食べたいし。これ、いくら? お金払うよ」 「お金はいいよ」 「あ、金いーの? じゃ、これもらっていい? このカツサンド」 のぞきこんでいる袋の中からカツサンドを取り出そうとした森宮の手を、緒川が無言で叩く。 けちんぼ、と言って手を引っ込めた森宮が、ふと目を軽く見開いて、こちらを見た。 「そーだ。ユッキーさ、今度カラオケ行かない?」 「カラオケ?」 「ずーっと前から言おうと思ってて忘れてたわ。毎回毎回バスケ部の同じメンバーじゃつまんないしさ。金曜か土曜、ユッキーの都合のいい日でいいからさ」 「――うん、行くよ」 幸成は、笑って応えた。 森宮が誘ってくれたことが嬉しかった。 けれど、それ以上に、週末の夜をひとりで過ごさずにすむことに、ほっとするような思いだった。 今度の土曜の夜、松下はまちがいなく梨絵奈と過ごすはずだから…。
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