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「ほんっとに、ちっちゃかったわ。あの男」
ようやく五限目が終わって休み時間に入った途端、あゆこが突然なにかを思い出したかのように呟いた。
チラチラと小指と親指を交互に立てては
「こっちか? いやこっちか?」
と、眉間に皺を寄せている。
「どっちでもいいよ」
私の呆れ声も気にする様子も無く、あゆこは閃いたように私に親指を見せ付けて、
「長さはこっちか」
と一人、納得顔を作った。
「あゆこのが緩いんじゃないのぉ?」
あゆこの隣の席で、向かい合わせに座っていたみさとゆっこが、クスクスと笑いながら野次を飛ばす。
私はあゆこの後ろでその光景を見ながら、自分にはまったく訪れることのないその時を思って、深くため息をついた。
これまで、たくさんの男と付き合っていながら、高二にして未だ処女。
周りが順調に経験を重ねる中、多少の焦りは隠せない。
平気なふりしてるけど。
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