第一章 未必の故意

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「はい、確保」  加奈が言い、内藤は、志免が隠し持っていた短いロープで、さっと隆一朗の手を後ろに回して縛る。  男二人で隆一朗をなんとか横抱きにして走った。  明らかに志免が抱えている足の方が下がっていて覚束なかったが― 「おいっ、てめえらっ」 と男たちが手を振り上げ、叫んだ。  銃を出して来ないのは、壱子が居るからか。 「隆一朗は預かったわ! 話を聞いたら、無事に返すからっ」  走りながら叫んだ壱子に、男たちは迷うように顔を見合わせていた。
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