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部屋の窓から古びた街灯が見えた。その光は弱く、一番近いマンション一階のオレの部屋のドア近辺を照らすくらいしか光量がなかった。
オレは街灯から目を離し、スマホの画面を見た。
そのメールのタイトルには「【緊急! ダイレクトメールではない】必ず読め!!」と書いてあった。
「斬新だな」
オレは鼻で笑って削除しようとした。
消せばよかったのかもしれない。だが、オレは気まぐれに、そのメールを開いていた。
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私はおまえだ。
50年後からメールを送った。
タキオン通信と言っても分からないだろう。
未来から過去にメールできるようになった。
エイプリルフールだ!
ドアを開けるな!
死の間際まで苦しむことになる。
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五十年後からのメールを信じる気にはならなかった。しかし、心にトゲが刺さったことは事実だ。
簡潔な命令と、それを無視した結果どうなるか、という端的な文章はオレらしい。そして、文字制限でもあるのか百文字に満たないメールで、『いつのエイプリルフールか』という大切なことを書き漏らしているところもオレらしかった。
オレはスマホを眺めながら、眉間にシワを寄せていた。
五十年生きていれば七十五才になっているはずだ。苦しみながらも、半世紀生き延びるほどの事態とは『なにか』も書かれていなかった。
オレはもやもやしたまま、メールを削除した。
たぶん、最新型のシステムで金がかかるのだろう。
未来からのメールは、その後、届くことはなかった。
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