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 映画を見て、ちょっとおしゃれな店でランチ。  その後は夕方までショッピングモールでのウインドーショッピング。  横山の気合の入りようからすれば、いささか平凡なデートプランではあるが、最初の嫌々感はどこへ行ったのか昭久は深浦とのデートを思いのほか楽しんでいた。  デートなんて、ここ最近は女の子に誘われるまま、半分義務感でしていたのに、深浦とのデートはこれまで昭久がしてきたものとは全く違った。  今までは女の子からこうしてほしいと請われると、それに応じて昭久が動くといったスタイルだったのが、今日は昭久の方が深浦が喜びそうなことを率先して考えている。  『彼女』相手だと面倒としか思えないのに、ことそれが深浦となると話は別。  自分がしたことで深浦が嬉しそうな顔をみせる、それだけで昭久も嬉しくなってしまうのだ。 「深浦、さっきの映画の原作本が出てる……」  ショッピングモール内にある書店の入り口に、先ほど見た映画の原作本の特設コーナーが設けられていた。  映画は横山のチョイスにしては面白い内容で、深浦も原作を読んでみたいと言っていた。深浦も喜ぶに違いない。 「深浦?」  さっきまで昭久の隣を歩いていた深浦の姿がない。  昭久が周囲を見渡すと、深浦は書店と通路を挟んだ向かい側にある雑貨店にいた。  何か目を引くものでもあったのだろうか、店の外に置いてあるラックを真剣な顔で見入っている。 「それ、欲しいのか?」  そこにはシルバーのアクセサリーやストラップなどが色々とつり下げられており、昭久はその中から深浦がじっと見ていたストラップを取り外した。 「――――えっ?」 「ストラップ。これ、気に入った?」  昭久が手にしたストラップはシンプルなクロス型のモチーフに蔦が絡まったようなデザインで、クロスの右肩に緑色のガラスがはめ込まれている。  どちらかといえば「かっこいい」感じのそれは、深浦のイメージとは少し違う。 「気に入ったというか……えっと」  昭久と目が合うと、深浦はほんのりと頬を染めてそのまま顔を下に向けてしまった。 「深浦?」 「それ…………新田くんに似合いそうだなと思って」  ちらりと上目づかいで昭久のことを覗い見ながら深浦がぽつりと呟いた。
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