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道の向こうに見えるプラタナスの木の根元には、黄色い小山が出来ている。
柔らかい夕方の陽射しを浴びながら、俯き加減で足早に脇を過ぎて行く背中をいくつも見送った。
「ごめんごめん、遅れたー」
窓際のテーブルの反対側に回ると綾菜は、華奢なバッグを椅子の上に投げ出した。
「なにそれ、ブルガリ? 」
「うん。この前セールだった」
「あいかわらずだねえ」
呆れながらさめかけたコーヒーを口にした。
「もうすっかり秋だね」
通りかかったウエィトレスさんに注文を告げると、綾菜が窓の外の風景に視線を投げた。
「うん」
「ごめんね、なかなか時間が取れなくて。校了が3つも重なっちゃってもう死ぬかと思った。で? 何があったのお? 」
言いながらきらっきらっした瞳でこちらに身を乗り出してくる。
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