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「颯太、今日は馨瑠さんのとこ行く?」
放課後帰ろうとしていると、圭介に声をかけられた。
「今日は行かないよ」
「そっかーじゃあ暇?ちょっと付き合ってよ」
「いいけど、どこ?」
「馨瑠さんとこ!」
「はぁ?なに言ってんの?僕の話聞いてた?」
「聞いてたよ。今日は手伝いないんでしょ?だったらちょっと馨瑠さんのとこ行くの付き合ってよ。まぁ颯太が無理なら俺一人で行くけど、どうする?」
「……分かったよ。一緒に行けばいいんだろ。けど、バイト休みの日までバイト先に行くなんてなんか変じゃない?」
「そんなの、気にし過ぎだよ。馨瑠さんだって気に留めないって。じゃあ、決まりって事で」
まんまと圭介の策略に乗せられてしまった。
手伝いがあってもなくても、僕と馥郁堂に行くのは圭介の中では決定事項だったに違いない。
僕はどうして毎度、思う壺に嵌ってしまうのだろう。
少し自分が情けなくなった。
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