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静華の車は左ハンドルで、朱実は車のフロントをまわって助手席に乗った。
気が変わるまえにとでも思っているのか、静華はすぐに車を発進させた。
「あの……すぐ終わるんじゃ……」
「あそこでムラサキとばったりってことになったら困るでしょ。わたしたちに守られたなんて知ってごらんなさい。ムラサキのプライドが傷ついちゃうから」
紫己を何から朱実が守れるというのか。
何を訊ねるにしてもどう訊ねるか、下手なことは云えない気がして朱実は考えあぐねる。
結局はふたりともが何も口にしないまま、静華はまもなく地下の駐車場に入って車を止めた。
静かなエンジン音が止まることはなく、ただ夜景の煌びやかさがなくなり、景色さえ止まったことで狭い空間に閉じこめられた気分になった。
地下駐車場という天井の低さに圧迫感も覚える。
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