四つの国

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「我が呼ぶまでは基本的に誰も姿を現さぬ。……城に居る時と変わらず付き纏われてはかなわんからな」 身の回りの世話は勿論屋敷の者達がやっているのだが、彼等は驪珀が居ると知ると努めて視界に入らない様行動していた。 驪珀は別に、此処に居る者達が嫌いな訳ではない。信頼しているからこそ、甘え方は違うかも知れないがこうして甘えているのだ。 「そなたを連れて来た時に何人か出て来たと思うが、あれは例外にしか過ぎぬ」 成る程、とコクリと頷いた漓朱は、手を放しさっさと席に座ってしまった驪珀に困った様な視線を向ける。 こんなに大きなテーブルは見た事がなく、椅子が沢山あっては何処に座ったら良いのか解らなかったのだ。おまけにテーブルマナー等一切知らない。 驪珀の目の前に座ると距離が出来るし、かといって近くの席は横になってしまうし、どうしたら良いのだろうかと、何も知らないからこその考えに至る。 「そなたの身分と我との身分には天地の差があるのだが……」 普通使用人や奴隷といった長いテーブルに座れない低い身分の者は、上座に居る主人と反対側に座るのが習わし。 身分の差で席が決められるのかと、漓朱は何とも言えない居心地の悪さに下唇を引き結び、習わしを知らない無知な自分が恥ずかしくて堪らなくなった。 驪珀以外の人が此処に居なくて良かったと、心の底から思う。彼女は生真面目な性格なのだ。 「我の隣で食べる事を許可しよう。……そなたはろくに作法を知らないのであろう? 琉貴を呼んでやるから、そう落ち込むな。目障りだ」
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