四つの国

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「琉貴様が教えて下さるのですか……?」 「彼奴は我の側近だからな。礼儀作法は叩き込んであるし、そなたには琉貴の様な者が合うだろう……?」 人懐っこい彼の性格は、確かに今の漓朱にはとても有難い。それに、彼の見た目は漓朱とさほど変わらずで、話し易いだろう。 それを踏まえた上の人選は的確であり、流石王であるとも言えるだろう。きちんと周りの者を見ている。 「琉貴は今城に居るが、間も無く帰って来るだろう。それと、漓朱よ。何故琉貴には様を付けるのだ……? 我は呼び捨てか名すら呼ばぬというのに」 素朴な疑問で、驪珀は別に怒っている訳ではない。声音は何時もの落ち着いた静かな物で、漓朱は機嫌を損ねている訳ではないと知り胸を撫で下ろす。 「特に理由はありません。貴方にも敬称を付けた方が良いのですか……?」 驪珀は少々考え口を閉ざす。人の分際で呼び捨てにして来る等良い度胸だと思う心と、特別視されず正直心地良いと感じる心とで何と返事をするべきか考えあぐねてしまったのだ。 そうこうしている間に不意に背中に現れた気配に、驪珀は長い睫毛を伏せた。 「主様只今戻りました。もうっ、報告を丸投げにして帰るのは止めて下さいよ」 「そなたが居れば我が行かぬとも充分であろう?」 「信頼して下さるのは嬉しいですが、そんな甘い言葉に騙されると思わないで下さい。主様の莫迦」
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