One─6.19

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雨の音で目が醒めた。 カーテンのわずかな隙間から外を見る。今日も雨。梅雨だな、と改めて思う。 幸い、土曜日だ。どんな天気であっても構わない。わたしはジーンズを穿き、ネルシャツのボタンを留め、その上からグレーのパーカーを着た。 眼鏡をかけて、部屋を出る。 リビングには、既に同居人の姿があった。 大学に入るときにルームシェアを始めて、今年で三年目。 料理は、彼の担当。どうやら今朝は和食らしい。魚の焼ける、いい匂いがする。 燕君、とわたしは彼に声をかけた。 「おはよう」と続けると、 「おはよう」とだけ返ってくる。 相変わらず、素っ気ない男である。
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