始まり前

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「あ、お兄ちゃん ソース取って」 「そんくらい自分でやれよ」 「うっさいなぁ」 その日は朝から雨だった 俺はいつものように 2つ下の弟と朝飯を食べている 母親は遅くまで働いていて 朝は寝てる その為飯の支度は弟と交代でしている 父親はいない 家族三人身を寄せあって極狭アパートに 暮らしてた 生活は俺と弟がバイトをする事で 何とかやっていけている 同い年の連中が恋愛やら部活やらに 青春を謳歌している間 俺ら兄弟は毎日家事とバイトに追われている どん底のド貧乏だけど 案外 俺はこの生活を気に入っている 母親は女手一つで 俺ら二人を高校に通わせてくれた 母親は地味で 年より老けて見えた 母親は女を捨て ひたすら倹約しながら 朝から晩まで必死に働いて 俺達を育ててきたのだ 「結構降ってるね」 「ホノセ、こっちの大きい傘使え」 「え?でも…」 「大丈夫大丈夫、 俺はこっちのビニールで行くから」 「えぇ?だってお兄ちゃん おっきいんだから俺がこっち使うよ?」 「………………」 「あ、まってよぉ―――」 俺は弟の言い分を無視して 三本あるうちのビニール傘をさして家を出た 一本は母親用の赤い傘 もう一本はバイトの先輩がくれた 大きめの黒い傘 雨は横殴りの本降りだ ビニール傘では確実に濡れるだろう
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