459人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「あ、お兄ちゃん ソース取って」
「そんくらい自分でやれよ」
「うっさいなぁ」
その日は朝から雨だった
俺はいつものように
2つ下の弟と朝飯を食べている
母親は遅くまで働いていて 朝は寝てる
その為飯の支度は弟と交代でしている
父親はいない
家族三人身を寄せあって極狭アパートに
暮らしてた
生活は俺と弟がバイトをする事で
何とかやっていけている
同い年の連中が恋愛やら部活やらに
青春を謳歌している間
俺ら兄弟は毎日家事とバイトに追われている
どん底のド貧乏だけど
案外 俺はこの生活を気に入っている
母親は女手一つで
俺ら二人を高校に通わせてくれた
母親は地味で 年より老けて見えた
母親は女を捨て
ひたすら倹約しながら
朝から晩まで必死に働いて
俺達を育ててきたのだ
「結構降ってるね」
「ホノセ、こっちの大きい傘使え」
「え?でも…」
「大丈夫大丈夫、
俺はこっちのビニールで行くから」
「えぇ?だってお兄ちゃん
おっきいんだから俺がこっち使うよ?」
「………………」
「あ、まってよぉ―――」
俺は弟の言い分を無視して
三本あるうちのビニール傘をさして家を出た
一本は母親用の赤い傘
もう一本はバイトの先輩がくれた
大きめの黒い傘
雨は横殴りの本降りだ
ビニール傘では確実に濡れるだろう
最初のコメントを投稿しよう!