お隣さんの懸念

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「なんで?」 「なんでって、えーと、……うん」 なにが「うん」なんだ、と。自分自身にうんざりしながらも、慎吾は「だってさぁ」と出来るだけなんでもないことのように続きを吐き出した。 「俺、ほら、男でも恋愛対象にできるじゃん。しろも知ってるでしょ? 身持ちも超軽いよ?」 「まぁ、なぁ。おまえ、ホント軽いよなぁ」 「そこなの、しろの同意ポイントは。って言うか、だからそうじゃなくて」 「そうじゃなくて、なんだよ」 早く言わないとマジ俺、寝るからな、と続けられて、「だよねぇ」とは心底思った。 って言うかそもそも、俺がいないと眠れないってのもなんなのよ、と思わなくもない。 むずかって目を擦っている真白の頭を、あやすようにかき混ぜながら、慎吾は小さく息を吐いた。 「だから、こうなんて言うのかな。うっかり自分に手ぇ出されたらどうしよう、とか」 言った瞬間、微かに空気が強張った気がした。それは自分が緊張したからなのだろうけれど。慎吾が答えを待っていると、真白はぼそっと「ないだろ」と呟いた。 その答えを分かっていたはずなのに、慎吾はそれでも何か重いものを呑みこんだような気分になる。 俺は、そう言う対象として、たぶんずっと、見てるんだけどな。 撫ぜていた真白の頭から手を離すと、伸びてきた真白の手がそれを掴んだ。子ども体温の暖かい真白の熱が伝わってくる。
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