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「あぁ美味しかった」
満足満足といいながらお腹を擦って欲しいところだ。
それか、ごろにゃんとその辺で転がって目を瞑って欲しい。
だけど、そのどちらもすることがなく笑った彼女の口を見て僕は笑った。
前歯にニラだかキャベツが挟まっている。
教えてあげた方がいいのか、教えない方がいいのか。
迷う。
それとも、口をイーってさせて僕が取ってあげようか?
いやいや、ここは谷原家ではないし、そんなことをしたら谷原さんが恥ずかしがっている可愛い顔を他の人に見られてしまうかもしれない。
恥ずかしがる谷原さんが見たいけど、僕は谷原さんにお手洗いに行って鏡で歯を見てきた方がいいと思うよと教えてあげることにした。
閉じた口をさらに自分の両手で隠した谷原さんに吹きだした。
その動きはまさに可愛い以外の言葉が思い浮かばないし、極めていた。
動揺しながらお手洗いに向かう彼女の後姿を見て、改めて思った。
惚れた弱味だと。
きっと、谷原さんにならば何をされても幻滅よりも面白いとか可愛いに変わってしまう気がする。
絶対にしないとは思うけど、目の前で鼻の穴をほじられたとしても……。
窓の外は相変わらずの雨模様。
大人しく送っていこう。
どうせ、夜にはコンビニのバイトだし。
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