一.俺が為にキミを渦中に突き落とす。

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ただなんとなく、過ごしていた。 ただなんとなく、生きて日々を過ごしていた。 将来の事も未来の事も何一つ深刻に考えずに、ただ過ぎる今をなんとなく過ごしてきて、これから先もただなんとなく過ごしていくのだろうと、漠然と思っていた。 そんな中、高校行事の一つでもある職業体験を経験するに至って、特に何の希望も無い俺は、第一希望第二希望第三希望と、職種項目から適当に選んで適当に書いて提出した。 クラスの奴等は大概第一希望を優先されて割り振られていたが、俺に対しては絶対第一希望を考慮してくれてないのだろうと、そう思わざるに得ない状況を目の当たりにしている。 大体俺は、第一希望は職種項目の一番上に書かれてあった、安全対策委員という、役場の中にあるデスクワーク的なマイナーなやつを書いた筈だ。いや、絶対書いた。 なのに何故、俺の眼前に広がる光景はきゃっきゃっと無邪気な声を煩いばかりにあげる園児達の姿で埋め尽くされている? 予想としてはあれだあれ。デスクワークなのだから、机の上に書類の山が形成されている光景を予想していたのだが。 それがどうして完全アウトドア完全体力重視に化けている? 百八十度変わってしまってるのだ? よし。これはあれだ。抗議しよう。担任に何故俺の第一希望が通ってないかの抗議を断固してやろう。 それに、保育園の体験は人気高めの競争率高めと聞いている。俺はそんな子供相手の希望なんて書いてないのだから、そんな人気体験現場に当選する筈ないだろう。 だとすると何かの策略が働いているとしか思えず、 「にーちゃ、だっこー」 今もの凄く、逃げ出したい。 両手を俺にと差し出している子供から全力で、逃げ出したい心境に駆られている。 「つかれたーだっこー」 嘘をつくな絶対疲れてないだろお前。 心底疲れているならそんなキラキラとした無垢な目なんてできないし、だっこだっこと連呼する気力も沸かないだろうが。 それに、子供とはいえど馴れ合いを対人マジ苦手な俺に求めないでくれマジで。 相手が人だという職種は絶対に当たりたくないから第三希望までデスクワーク類を選んだというのに。備考欄にも人とは絶対に関わりたくないと書いたのに、そんな俺の願い無視して、馴れ合いを要求するだけしてくる職種に突き落としてくれやがったんだ。担任め。
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