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----- 2015/12/10 --------------------
母がまたあの交差点を避けた。
塾に通うようになってから、いつも車で私を送り迎えしてくれる母。
でも、あの交差点は絶対に通らない。
真っ直ぐ通ったほうが近いのに。
なぜだか回り道するんだ。
前に一度理由を聞いてみたんだ。
そしたら「駅前の銅像が大好きで、それを見たくてつい回り道しちゃうの」って言われた。
でもね、少し前からその銅像、修繕中でシートが被せられて見えないんだ。
それにね、知ってるんだよ、駅前を通るときに銅像のほう見てないの。
問い詰めてもたぶん答えてくれないと思う。
あの交差点に何があるんだろう。
たまに通るけど、普通の交差点なの。
私すごい気になっちゃって。
母は避けるけど、私はちょくちょく通るようになった。
それでね、長袖でもちょっと寒くなった頃かな。
あの交差点で、
花を置いてる人を見たんだ。
----- 2015/12/11 --------------------
一週間ほど前、祖父の遺品整理をしているとき。
倉の中で「戦車」が見つかった。
ボロボロで錆びだらけ。
倉は何年も放置されていたそうで、なぜ戦車があったのかはわからなかった。
その戦車。
僕も男だから、戦車に少しは興味がある。
倉の遺品を確認しているときに、触ってみた。
熱があった。
雪が降ろうかという気温だ、金属なんて痛いほど冷たい。普通は。
あの戦車は熱があったんだ。
それからだ。
僕は追いかけられている。戦車に。
気が付くと目に見える距離に戦車がいるんだ。
僕以外には見えていないらしい。
しかも、戦車は熱がある。
それもだんだんと温度が上がっている。
わずかに熱を感じる程度だったのが、お湯のような温度になり
火傷しそうな温度になった。
それからしばらく経っている。
今や戦車が近くにいるだけで冬だというのに汗が止まらない暑さになる。
どうしようもない。
焼ける。
体が焼けていく。
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