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強く湿った風がイリスの外套と髪を撫でる。
比較的温暖な気候であるこの中央地区には10の街と村があり、集合場所であるラグラーズの街はそのうちの一つ。中央地区内では比較的栄えている街だ。
ギルドほどではないが頑丈そうな門があり、周囲は円を描くように石造りの外壁が街を覆っている。街と村を分ける大きな境目はこの門と外壁があるかないかである。当然ながら外壁も門もない村の方が擬態獣の被害は多い。
ラグラーズの街は比較的栄えているはずだが何人か商人や旅人と擦れ違ったぐらいであり、街中は非常に静かであった。
待ち合わせの宿を見つけると木製のドアを開く。
宿屋内は外とは違いそれなりに混んでいた。イリスは擬態獣狩りのメンバーを探す為宿屋の中をゆっくりと歩いた。ロビーに設置してあるソファーの前を通った時、座っていた体格のいい男がこちらに振り向いた。
服装は軍服のような緑色のジャケットにズボン。
背中には紫色の刀身を持つ大剣。
間違いない。
構成員だ。
その男はイリス見るなりひゅう、と口笛を吹いた。
「よお、あんたが仲間か?」
イリスの背にある大剣を見て仲間と判断したのか。金髪の男は値踏みするかのようにイリスを見上げた。
「名はイリス。クロイオプス討伐チームの一員だ」
「そうか。順位は?」
「52位だ」
「は…?マジかよ…」
明らかに萎えた態度で男は溜息を吐いた。
男の態度も無理はなく、通常Aレートの擬態獣を相手にするには最低でも30番台か、それより上の構成員が3人集まらないと厳しい闘いになる。
それを憂いているのだ。
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