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そしていつも気が付けば月曜日の朝。
親の仇のように鳴り響く目覚ましのアラームで目を覚まし、機械的な動きで布団から這い出て支度を整え家を出る。
せめてもの救いは、会社が自転車で行ける距離にあった所か。
これで毎朝生気の失せた企業戦士が鮨詰めにされた満員電車に乗らなければならなかったら、
多分3年と経たない内に精神崩壊して生活保護のお世話になっていた事だろう。
「不動君、分かっているとは思うが今日の商談……………失敗は絶対に許されない。
うちの専務が土下座して泣き付いて、それで何度も接待して漸く漕ぎ着けたチャンスだ。
先日月産社に契約を打ち切られた今、今回の商談が失敗すれば……………分かっているな?」
「十二分に心得ています、部長。
ただでさえ自転車操業の現状、最早崖から突き落とされる寸前ですからね。」
「あぁ……………行くぞ不動君、失業保険給付手続きの調べは十分か?」
「恐ろしい事言わないで下さい部長。」
中小…………いや、零細企業はいつだって崖っぷちだ。
明日死ぬ(倒産)するとも知れない儚い命(資金力)。
全力で生きなければならないのだ。
「不動君、くれぐれも粗相の無いようにな。」
「部長、そのように顔を青くして震えていたら挙動不審で通報されそうなので落ち着いて下さい。」
自動ドアという文明の利器を潜り、程好く冷房の利いたビルの中に入る。
東京の一等地に本社を構える一部上場の大企業、タハタ自動車。
流石は大企業。
廃屋のような私達の会社とは違い、フロアは広く天井は高く全体的に清潔。
有名大卒のエリートのみが勤める事を許される、約束された勝ち組の大企業だ。
窓際族にされても良いから、こんな福利厚生の整った会社で働きたいものだ。
「失礼、14時からトレスティアーノ伯爵との会談を申し入れていた錫代金属の者ですが。」
緊張の余り人魚姫のように言葉を失った部長の代わりに、若く愛らしい受付の女性に取り次ぎを依頼する。
「錫代金属の方ですね。
お話は伺っております、こちらのカードキーをどうぞ。
トレスティアーノ伯爵は34階でお待ちしております。」
「どうも。」
カードキー?
と激しく疑問に思いつつも、渡されたカードを受け取りエレベーターへ向かう。
当然すれ違う社員の方に会釈は忘れずに。
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