魔帝

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いきなりボルテージの下がったミシェルの声色に、セシルも自身の隣へ視線を向けると…そこにあったのは今までに見たことが無いジェシカの表情。 テーブルに視線を落として口をギュッと噤んで……上気した頬はお酒のせいではないことは…二人にはなんとなく理解できた。 しばらくの間言葉を失ったように押し黙るミシェルとセシル。するとそんな二人から向けられる視線に気が付いたジェシカが、慌てた様子で二人の顔を交互に見やり、苦し紛れにへらへらと笑って見せる。 誤魔化しているつもりなのだろうが……セシルは彼女の母親で、ミシェルは姉妹同然。 その瞬間、ミシェルとセシルの利害が合致した。 「ジェシカ。まさか…お母さんに隠し事が通用するなんて思ってないわよね?」 「ジェシカ、話してみてください。」 「え、な、何のこと…?別に私隠し事なんて……。」 苦しい言い訳。何も返さず視線だけを向け続けてくる二人を前に…冷や汗が額を流れ…なにも言えなくなって時間だけが流れて行く。 そんな時だった。 「ジェシカー、モモっていつもどこで寝てる?」 「…あっ!それじゃあ私が寝かしてくるよ!!私の部屋だし!!!!」 でかしたと言わんばかりに手を挙げて立ち上がり、声を張るジェシカ。しかし相手は……そんな彼女の母親だ。 「拓也君ッ!!!! ジェシカの部屋は階段を上って左突き当りよッ!!!お願いできるかしらッ!!!??!? これは最重要案件なのッ!!!!!!!!」 「え、あ…はい。」 ジェシカ、敗北。 すっかり瞼がくっ付いて眠りこけているモモを抱いてリビングを出ていく拓也へ口惜しそうに手を伸ばすジェシカ。 そんな彼女の肩にずしりと重い手が置かれた。 「さぁジェシカ、詳しく聞かせてちょうだい?」 「……み、ミシェル助け……。」 「今まで散々やられてきましたからね。お返しです。」 「そんなぁ……。」 ニコリと綺麗に微笑んでそう返したミシェルだが……その裏には今まで積もりに積もってきた積年の恨みすら感じさせる。 とにかく目を合わせないように…視線を机に向けたままのジェシカだったが……恐らくもう…この二人から逃げることは不可能だろう…と、本能的に感じてしまう。しかし正直に話すのも恥ずかしい。 だがいつまでも隠し通ることでないのもまた事実。それに…彼女らや拓也からならば何か貴重な意見を聞けるかもしれない……。 こんな話今まで自分とは無縁だったこともあり、どうしても気恥ずかしくあったジェシカだが……しばらくの沈黙の後に彼女は恐る恐るといった様子で口を開いた。 「…アルスに…好きだって言われた…。 付き合って欲しいって…。」
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