魔帝

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「そ、そりゃあ…好きだよ?」 「答え出ましたね。」 「で、でもそれはあれじゃん!友達として接してきた感想で……その…付き合うとかって考えたことないし…。」 消え入りそうに小さく鳴りながらそう言葉を紡いだジェシカ。彼女はしばらくの間またモジモジと下を向き、机の下で両手の指を絡めてショートしそうな思考回路を何とか巡らせようと努力する。 …が、当然答えなど出てくるわけがない。 そんな珍しい姿を晒してしまっているジェシカが面白いのだろう。キザに顔を手で覆った拓也が彼女を煽るように口を開いた。 「クックック…自称恋愛マスターが随分と可愛くなってしまったものよのぉ…。」 「……ねぇ、たっくんはさ……いつミシェルのこと女の子として好きだって気が付いたの…?」 「んぉ!!?」 しかしここでまさかのカウンターブロー。ジェシカのそれもまた…全く悪意がないためタチが悪い。 何とか逃れられないかと…思考を巡らす拓也。そんな彼の心境などつゆ知らず真っすぐに彼を見つめるジェシカ。そして僅かに期待を込めたような眼差しのミシェル。 逃げられるわけがなかった…。 「……とある大人な女性に説教されて気付かされたんだよ。」 「えぇぇ参考にならないぃ…!!」 「俺の緊張返せや。」 「チッチッチ…ダメねぇ拓也君、ここは年の功の出番かしらね。」 「いやだよ、酔っぱらってるお母さんとか絶対ふざけるじゃん。」 「まだまだ酔ってないしぃふざけないわよぉ~大切な娘のことなんだから~。」 すっかり二本目の瓶も空になっており、新しい瓶に手を掛けたセシルがコルクに金具を差し込みながら…明るくも穏やかな笑みを浮かべながらそんなことを呟いた。 微笑むことで小皺が深くなる自分の母親の顔。心底嬉しそうにそんな言葉を口にした母を前に、一つため息を吐きながらも…心が温まったジェシカは仕方ないなぁというような笑みを浮かべる。 「ズバリね、〇れるかどうか。」 「ミシェル、お母さんに水ぶっかけといて。」 「バケツでいいですか?」 「や~ん!娘たちがイジメる~!!」 次の瞬間ジェシカの口から漏れた溜息は、国政で悩むローデウスのそれよりも重かったと拓也は後に語る。 「冗談ですよ、お水持ってきます。あまり飲み過ぎないでくださいね。」 「は~い!」 ひとしきり楽しそうに笑ったセシルは空いている自分のグラスに新しく開けたワインを注ぐと、手元の小皿に取り分けられいつの間にかすっかり冷たくなっていた腸詰をフォークで口に運んで一口でグラスの中身を呷る。 そして大きく一息吐いて満足そうに口元を指の背で拭うと……片手で頬杖をついて、右手で空になったグラスを揺らしながらぼーっと視線をそこに置いていた。
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