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ーーそれからの兄の行動は早かった。
椅子やテーブルを解体し、さっきまで話していた足元を狙ったトラップを作り始めた。
ただの暇つぶしの妄想程度で話していたが兄は真面目に考えていたようだ。
ボクは「そんなこと起こりっこない」そう諭した。だが、兄は「お前も何も分かっていない」そう返された。
ボクはムッとして二階の自室へ戻った。
それから一日半くらいだろうかボクは兄と言葉を交わさなかった。
時刻は23時、ボクは眠れずにいた。ぼーっと暗い天井を眺めているとノックもなしに兄が入って来た。
「チア奴らが来た…!」
兄の表情と声色は恐怖に満ちていた。
「えっ?」
その言葉を聞いた瞬間ボクは強い寒気に襲われた。
兄は茫然とするボクの事はお構いなしに手を取り強引に引っ張る。ボクは声も出せないまま兄についていった。
「家の裏手側に出る為に廊下の窓に非常用のロープを用意した。窓から垂らせばすぐに使える。チアは身をしばらく隠せ」
ボクの言葉の隙間を許さないと兄は次から次へと支度をする。
ボクに荷物の詰まったカバンを背負わせ、濃い緑色のコートを羽織らせた。
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