プロローグ

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初めて男の人の涙を見た。 綺麗………… 何故だかそう思った。 でも、目の前にある涙に濡れた瞳が私の言葉を聞いた途端冷たいものに変化した。 「あんただけが幸せになるなんて、絶対に許さない」 さっきまであんなに綺麗だった瞳が、憎しみの色に変わっていく。 恐い……… 背中からじわっと恐怖が沸き上がって、体が震えてきた。 心臓の音が大きくなり、思わず目を瞑る。 このまま倒れてしまうかもしれない。 「琴葉(ことは)、琴葉………大丈夫?」 目を開けると、美咲(みさき)が心配そうに覗き込んでいる。 「あ、ごめん」 「いいけど、またうなされてたよ。大丈夫?」 「うん、大丈夫」 美咲が安心したように笑った。 時計を見ると4時。 高2の頃から時々見る夢をまた見て、美咲を起こしてしまったみたいだ。 「じゃあ、私もう一回寝るから」 欠伸をしながら戻っていく美咲の背中を見つめる。 いつも、ごめんね。 心の中で美咲に謝る。 最近見なくなってたのになぁ。 でも、原因は何となく分かっている。 「私ももう少し寝よう」 そう呟いて目を閉じた。
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