649人が本棚に入れています
本棚に追加
/444ページ
「父が、すみません」
頭を下げる拓海はすごく辛そうな顔をしていた。
拓海……
私が逃げてないで、きちんと説明しておけばよかった。そうすれば、拓海にこんな顔させないで済んだのに。
ごめんね。
自分が情けなくて、ぎゅっと手を握りしめた。
そんな深刻な空気を破ったのは、母の明るい声だった。
「桐生さん、………拓海君でいいかしら。謝らなくていいのよ。誰が悪いわけでもないんだから。
琴ちゃんがなかなか紹介してくれなかった訳がやっと分かったわ。
はぁ。
琴ちゃんも知ってるのね?娘に昔の恋愛話を知られてるなんて、恥ずかしいじゃない」
手で顔をパタパタ扇ぎながら、お母さんは水を一口飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!