氷の女王

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氷の女王

ここは、魔法学園ウェルヘイト。様々な種族の子供達が通う学園である。ここには、人間から獣人、はたまたエルフ、悪魔、天使と様々な生徒達がいる。その中で学園最強と呼ばれる一人の生徒がいる。 彼女の名はミレディ・ハイデンビッヒ。ウェルヘイト内に彼女のみが使用を許可されたプライベートルームを所持している為、彼女が他の生徒達と交流するという事はない。しかし、彼女を見た者は皆口を揃えてこう言った。 ーー氷の女王ーー 何故、そのような呼び名がついたのかは誰にも分からない。しかし、一つだけ確かな事がある。それは、どの者も絶世の美女だったと言っていたという事である。 彼女の学年も分かる生徒もほぼおらず、この学園で教鞭をとる者すら彼女の学年を把握している者は居ないらしい。この学園の理事を務める者は知っているという噂もあるが、この学園の理事を見た事がある者すらいないらしく、結局の所何も分からないという状況なのだ。 そうしていると不思議と色々な噂が駆け巡る事になり ーー最強の魔剣士ーー ーー学園最強ーー 彼女を見たという者は、彼女の青い瞳で見据えられるとまるで心の芯から凍らされるような感覚に陥ったと口を揃えて言っていた為にー ーー絶対零度の女王ーー ーとも呼ばれているそうだ。そんな彼女がいるとも知らず、一人の少年が今日入学式を迎えようとしていた。彼の名前はシオン・ハイデリヒ。このウェルヘイトに進学する目的は年に一度開かれる大会エリシュオンデイバトルトーナメントに出る為である。 エリシュオンデイバトルトーナメントとは、ウェルヘイトが主催する魔武器と魔法の武闘大会である。この大会には学年も問わず、他の魔法学園からの生徒も出場する為に事実上、生徒最強の魔剣士を決める大会となる。 もし、この大会で優勝する事が出来れば最強の称号と将来がほぼ約束されたと言っても過言ではない。しかし、シオンにとっては最強の称号も将来も重要ではなく、ただこの大会にどんな猛者達が出るのか、自分の力が何処まで通用するのかという二点だけがシオンがこの大会に出る為の理由であった。 そんな彼だが、本日入学式であるにも関わらず大きな目標も忘れ、必死な形相で走っていた。 現在、朝8時45分。入学式は8時50分に始まる事になっている。彼の家から学園までおよそ20分かかるのだが、まだ家を出たばかりである。 言わずもがな、彼が必死に形相で走っていた理由を理解出来ただろう。 ーーそう、彼は初日にして遅刻をする5分前なのだ。
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