祓魔師と陰陽師

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「魂が奪われたのですが、まだあの方は、死んでおりません。魂を元に戻せば、大丈夫ですが……」  彩魅の言葉が止まり、何が問題あるのかと思えば 、険しい表情で、愛菜が続く。 「――厄介なのよ。あの夜道怪……強いの。伊達に陰陽師を何人も殺してない」  鬼気迫る口調。愛菜も彩魅も、白に染まる妖怪が出現した段階から、威嚇と警戒を怠っていないのを理解はしたが、目の前で人が襲われたのを放置出来ない。 「……あれが愛菜ちゃんの追い掛けていた妖怪……でも、魂を奪い返さないと」  今だ護符円陣の結界内で動きを見せない女性を目にし、恐怖と己の気持ちが競り合いを始める。いかに強力な妖怪と言えど、この妖怪から魂を取り返さなければ、彼女はこのまま一生を終える。それを解決出来るのは、誰でもない――闇と闘えるチカラを持つ者のみ。 「ほう~あの真っ白いの……何処かで見たような気がするのじゃが……はて? 何処であったかのう~」  自己に問い掛ける最中、肩から悩ましい声が耳に届く。それでも、母雲は気にかける程の余力は無く、直ぐに自分を奮い立たせようと必死になっていた。  そんな状況が珍しいのか、白き長髪を掬い上げると、今一度三人の少女を見渡す。 「陰陽師のお嬢ちゃんは懲りずに追い掛けて来たのは理解したけど……灰色の髪なんて珍しいね。――まぁ、ワタシの白さには敵わないけど。……それと? 肩に妖狐??」  青い瞳が瞬きを増やす。退魔師に混じる妖狐を肩に乗せる少女が、異様に気になってしまう。 「母雲ちゃん、こいつは危険だから、相手は私に任せて!」  呪符を取り出すと、短い詠唱と共に式神を召喚する。喚び出したのは、六十センチ程の水の玉。絶えず水が動き回る不思議な球体だが、名前を水澪(すいれい)と呼び、青龍神族の式神であり、愛菜の目の前に浮いている。それと同時に、彩魅の神聖書も動きを見せ、炎を纏う鷹であるヌリエルが召喚され、炎々しい輝きを撒き散らし空を飛ぶ。 「……あら? 灰色のあなたは陰陽師じゃなく、祓魔師なのね。珍しいものは続くのも面白い。……でも、やっぱり気になるわね~、アナタ?」  怪しいも睨みを強めた青い瞳に、赤紫色の瞳が合わさると、ビクッ、としてしまい、身体が硬直してしまう。その瞳は妖怪としの恐怖ではない、他の“何か”を感じずにはいられない異様な眼力なのだ。
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