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車道をゆったりと歩くのは一人の女性。年齢で言えば二十代程の白髪を一方に結った白装束、白足袋と白ずくめの人間で、片手には杖の様に長い行灯を持っている。青い瞳は透き通り、白装束は胸元が開き、大きな胸の谷間を覗かせる美女である。
その姿を直ぐに見て反応したのは、スーツ姿の女性だった。
「――ぁ、ああ! 賀道さん! 賀道さんッ!! 助けて下さいィッ!!」
愛菜の神通結界に阻まれ、動き取れなくなった女性が、すがり叫ぶ様に声を絞る。それでも、賀道と呼ばれた白染めの女性は、ふふふっ、と微笑んでいた。
「あらあら、美奈子ちゃんと連絡取れないと思ったら、厄介な人達に捕まっていたのね?」
落ち着きありながらも、ややハスキーボイスな声。それでも、余裕があるのが十分伺える。
「助けて下さいぃ! ――急に、この娘達が!!」
「……そうね。美奈子ちゃんは頑張ってくれたわ。だから、もうそろそろ終わりで良いと思うのよ」
届いた言葉に、えっ? と疑問を抱き、美奈子は涙を流しながら、口を半開きにする。青い瞳が、楽しげに見開き、手にしていた行灯を前に出す。
「――さあ、貸していたモノを返してね? “返シテ頂戴”」
言葉を言い終えた途端、美奈子と呼ばれた女性は、 動きを止めた。まるで時間を止められた様で、視線も固定され動きを一切しない。
「――三神様ッ!!」
即座に判断し、彩魅の声に理解したからこそ、愛菜も護符で護符円陣の強化を試みるが、美奈子の胸元が黄色光を放つ。それは、玉になると――引き寄せられる様に行灯の中へと吸い込まれた。
「……ふふふっ、陰陽師の神通力結界でも、契約した者の魂までは束縛出来ない。それに、これは商売だったから、ワタシは、悪くないしね」
「――その魂返しなさいッ!!」
「何故? 美奈子ちゃんは望んだの? ワタシのチカラになりたいから、妖眼を使いたいって。でも、ただじゃ出来ないって忠告したのよ」
「何が忠告よッ! 人の不幸を楽しみにする外道妖怪ッ!!」
「何か凄い言われよう。でも否定しない。本当にあなた達も分かれば良いのに……すがり求め、頼りにされし者から見捨てられた絶望の――嗚呼! 身体が身震いするぅッ!」
思い出したながら、うっとりした恍惚な表情。艶ある声に、小さく息をすら乱す夜道怪を前に、母雲が直ぐに彩魅へ確認する。
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