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ドンドンッ、と2回鳴り響くノック音。
外側から入り口のドアを叩く衝撃音に二人の意識は音の方向に変わった。
それ以上とノックされることはなく二人が泊まる部屋に対して呼びかける声もない。
「宿主さんかな」
ドアに近いのはタクトだった。
会話を中断してノックされたドアを開くべく足を運んでドアノブへゆっくりと手を伸ばす。
直前、剣士は僅かに感じ取る。
木材の壁一枚を隔てた先から得られる視覚外情報、剣士はそれを今までの戦いにおいて幾度となく肌身で感じ取ってきていた。
そしてそれは自身でも放ってきたもの。
対象を確実に仕留める魔力量ー!
「タクトッ!!」
呼びかけは間に合わず、ほぼ同時に意図も容易く壁を貫通するのは鋭利な刃先。
少年はそれを視認すらできずに頭部に突き刺さる……というのが壁一枚を隔てた相手の理想だった。
名前を叫ぶ甲高い声と同時、タクトに襲いかかる一突きをも凌駕する剣士の最速が少年の襟を掴み、そのまま力一杯に引き寄せる。
間一髪で刃先は空を裂いてタクトは背中から床に倒れる。
「なっー」
何が起きたかを理解できないまま次の瞬間には貫通したドアが力任せに蹴り破られた。
自分を殺そうとした刃物を片手に全身黒づくめの布で覆われた同じくらいの身長の人型が間髪入れずに部屋の中で入り込む。
「その命、いただく」
一度目の奇襲失敗。
悔やむ様子もなく確実に殺すべく二度目の強襲、床に倒れる獲物に逃げ場なし
時間にして刃物がタクトの喉元に到達するのはおよそ三秒。
困惑、動揺、異常事態に反応できることも叶わない相手を絶滅させるには暗殺者にとっては充分すぎる。
だがそれを一人、既に剣を握りしめて間に入り込む剣士が阻む。
暗殺者は即座に対象を“邪魔者”へと変更。
放つ殺気を剣士に変えて心臓を狙って短剣を体格差を利用して上から突き刺しにかかる。
「っ!」
刹那、放たれる剣閃は暗殺者の速度を上回る。
下から振り上げる銀の一撃はカウンターを成立させて最速の迎撃によって暗殺者の胴体に深い斬痕を刻む。
血飛沫が舞い、斬撃とは思えない衝撃が相手の巨体を吹き飛ばして蹴り破ったドアの更に奥の壁へと打ちつけた。
壁にめり込む巨体は微動だにせず脱力した様子のまま立ち上がる気配もない。
僅か3秒ー
タクトは大きく息を呑んだ。
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