第一章 幻想世界

9/11
439人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
冒険者としての手続き作業、緊張で固まった表情の少年とは裏腹に剣士の足取りは迷いがない。 質疑応答、冒険者として必要な何らかのテスト、頭の中は色々な予測で落ち着きがなかった。 ただひたすら頭の中で悩みを紛らわそうと思考を働かせる少年が案内された一つの席に座る。 置かれたテーブルの先に相対して座るは冒険者ギルドの職員らしいきっちりとした服装に身を包む女性、面接相手だ。 心の準備を整え終わる前に始まる質問……は、時間にして一分に満たない時間に終えた。 答えたのは名前と年齢、それを答えると隣に座る同行者の剣士が慣れた様子で代わりに手続きを済ませてくれたのだった。 とはいえ、この国の冒険者というのは多種多様な仕事があり、そこには命がけになるものもある。 適正が無ければ不合格になって冒険者としての活動は認められない、と考えていたが代行手続きもこれまたすぐに終えた様子。 登録に必要な契約書のサインと血印、それを済ませれば小さな銅板“ブロンズプレート”が手渡される。 サイズとしては手のひらに収まる程度、重さはまるで感じず幼児でも難なく持てる。 これで手続きは終了か…?と戸惑う少年に女性職員は「以上です!」と満面な笑みを返してくれた。 やや呆然と、予想より大幅に早く終えた冒険者登録になんとも言えない達成感……逆に不安だ。 手渡された銅板今一度見つめると文字が彫り込まれているがそこはこの国の言語、タクトには読むことはできなかった。 素朴な疑問としてなんと書かれているかを剣士に問おうとした瞬間、先に剣士の口からー 「手続き済みましたがそろそろ日が落ちる頃合いです。暗くなる前に衣服など購入しておきましょう」 そう言われてふと、自分の格好を思い出す。 今は全身を覆い隠す雑な布切れで覆われていて見るからに怪しい雰囲気だが、この布の下も周りの中世風な衣装の住民が多い中、違和感しかない。 最大の違和感を布一枚で隠していたがそろそろ限界だろう。 周囲の視線を集めていることを自覚して一度だけ、こくりと頷く。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!