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赤い空は太陽が沈み、夜空を隠す雲の流れる暗闇の夜空。
街頭に灯が、街中は窓ガラスから漏れる民家の明かりによって輝く。
小さな街の小さな宿屋。
見た目こそ年期の入った風格というより修繕されてないボロそうな数部屋程度の宿屋にタクトと剣士は同じ部屋の予約を取った。
最安値だが中は外装より酷くない。
清掃が行き届いていて不満のないツインベッドの部屋でタクトは新しい衣服に着替える。
「これなら……大丈夫だよな」
汚れた現実世界での衣服を脱いで購入したての中世風な衣装に身を包む。
「サイズの方は問題ありませんか?」
「ベストサイズだよ」
キツくなく緩みもない。
その場で軽い運動をして全身に違和感がないことを剣士にアピールする。
「何から何まで助けられてばかりだ。けど本当に助かった、ありがとう」
素直な感謝、深々と一礼する。
その様子をベッドに腰を下ろしながら目の当たりにする剣士は両手を胸の前で振るう。
「お気になさらず、これは私が好きにやったまでの事ですから」
いまだにフードで顔はよく見えないタクトだが相手の様子から気恥ずかしい様子が伺われた。
脳裏に過ぎる1日の記憶。
庭で蔵の掃除をしていたはずが気が付けばこの見慣れない世界にいた。
そこから異形の生物に襲われて今、眼前に腰を下ろしている剣士に助けられて命を救われた。
そして剣士は深いことには触れずに困っているであろうとタクトに色々な処置を施して世話までしてくれる始末。
考えまい……というよりは考えるほど余裕がなかったが今は精神的余裕が生まれたことによりタクトは疑問を言葉にした。
「……どうしてここまで俺のことを助けてくれたんだ……?」
剣士の口元から気恥ずかしさが消えた。
「君は俺を怪しいとは思わないのか?」
「……確かに、ここまで無条件に親切にされれば怪しいと思われるのも仕方ありませんね」
「いや、俺はー」
“君を怪しんでる訳ではない”と主張しようと強張った声音に剣士はゆっくり腰を上げてその場に立ち上がる。
「ちゃんと話しておくべきでしょう。私が何者か、何故貴方を助けたのか、それを話す義務があり貴方には知る権利がある」
タクトの中で緊張が走り、身が固まる。
1番の疑問、それを明かす前に自身の顔を隠していたフードに剣士は自ら手をかける。
ーその瞬間だった。
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