第1章

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「私の娘、県庁に勤めているんですけどね。以前、あなたのお店に立ち寄ったらしいのよ、出張で東京に行った折に。」 「そうなんですか?」 てことは、人間の女性だよな? 「とんでもない娘でね。あなたのお客さんを脅してきたらしいのよ。娘が、というより、娘に憑かせた猫がね。トラというのですけど、可愛い老猫だったのを、あのバカ娘が鍛え上げて本物の虎みたいにしてしまって・・・あんな非常識な娘、見たことも聞いたこともないわ。」 ぼやくお婆さんに、俺は「あ!」と声を出した。 確かにそんなお客さんが来店した。    二人連れで、妙に迫力のある女性が、花を食べたいと注文していった。 名刺も交換していたことを思い出し、それで俺の名前を目の前のお婆さんも知っていたのかと納得。
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