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「すみません、お待たせして」 「いえいえ、また来なくて済むので、こちらも助かりました」 もしまだ私たちがこれから残業を続けたとすると、警備員さんの巡回の回数が増えるところだったのだ。 それを知っているから急ぐと、猪瀬と同年代に見える顔見知りの警備員さんは喜んでくれた。 近寄ってきた警備員さんと世間話をしながら、手早く荷物をまとめ、猪瀬と一緒にオフィスを後にする。 仕事の目処も立ったし、最後にほんの少しだけ警備員さんに良いことをした気分にもなれたしで、会議室の束の間の出来事をすっかり頭から押し出した私は、スッキリした気持ちでいた。 だからそのとき、猪瀬がいやに静かだったことなんて、まるで気にしていなかったのだった。
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