第1章

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あの時、雷の直撃を受けて以来俺には不思議な能力が身についたようだ。あの時とは嫌いな翔太 と取っ組み合いの喧嘩をしていた時のことだ。幸い二人とも大したことはなかったが、翔太だけ 感電死してくれたらありがたかったのに。 それはともかくその時から俺が強く思ったことが現実化するという不思議な現象が起きるように なった。爆音をまき散らして走るバイクに(うるせえな!転倒しやがれ)と思うと本当にバイク が転倒してしまった。あまりの偶然にその時はビックリしたが同じようなことがそれから繰り返 し起きて、次第に自分の不思議な能力を自覚するようになった。 雷が俺を直撃して以来この能力がついたことは多分間違いない。そうだ!この能力を使って翔太 を殺してやろう、いや自殺してもらおう。 (翔太よ、裏山の断崖へ行け!)そう俺は念じた。本当に翔太が裏山に登るかを見届けたくなっ て俺も裏山へと行ってみた。すると翔太らしき人物が登っていた。俺は(断崖まで行け)と念じ ながら後をつけて行った。間違いないあれは翔太だ。(よし、そのまま断崖まで行け) 翔太は断崖の縁まで辿り着いてじっと下を眺めていた。なぜだか分からないが俺も断崖まで行っ てみたくなった。翔太の顔が俺のほうを向いた。な、なんでだ、高所恐怖症の俺が断崖の縁へ行 こうとしている。 ま、まさか翔太もあの落雷で俺と同じ能力を身に付けて俺をこの断崖から飛び降り自殺をさせよ うとしているのか!やばい、俺の飛び降りたくないという意識より翔太の念力の方が勝っている。 俺は必死で踏みとどまりながら翔太を睨みつけた。翔太も必死の形相で俺を睨みつけている。も うこれは念力と念力の戦いだ。 踏ん張っていた足が断崖の縁から滑った。あっ!と声が出た時にはもう俺は断崖を落ちていた。 断崖の縁で翔太のニヤリとした顔が俺が最後に見た光景だった。
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