町へのお出掛けに誘われました。

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「私も行って良いの!?」  ドラゴンの姿にも馴れた事だし近くの町まで行ってみるか、というアーファルの言葉にティリアは喜色満面あふれ、食いつき気味に背の高い彼を見上げて詰め寄った。森に降る木漏れ日のように緑の瞳が輝いている。  ティリアが住んでいたパラ村は森の中にある村だったため、森の暮らしには慣れていると今までは言えた。薪となる枯れ枝を集め、男たちが狩ってきた鳥獣を捌き、水場へ水を汲みに行く。ある程度村の規模も大きかったため、小さな畑を耕したり、鶏を飼ったりもしていた。  だが、ここレオルーの森ではそんなもの一切通じなかった。そもそも森が深すぎてティリア一人では入ることすらままならない。崖下近くの岩盤は硬すぎて耕すことは適わないし、鶏を飼おうものなら次の日には獣に食われているだろう。ついでに洞窟で飼ったら駄目かアーファルに尋ねると煩いから止めろとすげなく断られた。  正直今のティリアは役立たずだった。担当している家事とて今までアーファルがやっていたのだから本来必要は無かったろう。その思いが日々ティリアをちくちくと蝕(むしば)んでいた。薬師の勉強をさせてくれるのはありがたかったが、ティリアはずっと可能ならば町で暮らしたいと考えていた。
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