二つ目 始動

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「胸を刻まれた、この子の名前はなんていうの?」 満はたずねた。 胸を刻まれた生徒は前髪を真ん中で分けていて、その顔立ちはうつむいていても整っているのが動画からもわかる。 「そいつは吉田光也(よしだみつや)。俺たちより一学年下の一年生だ。吉田は休み時間たいてい屋上に一人でいる。クラスではたぶん孤立してんじゃねえの? 福島から逃げてきた、ばい菌野郎だったりしてな」 それを聞いて、満はこぶしを強く握りしめた。 おそらく神島たちは、休み時間に一人で屋上にいた吉田に目を付けたのだろう。 胸に刻まれた模様は自ら望んで付けたものではない。 神島たちに脅され、抵抗できないようにされた上で、胸に傷を付けられたのだ。 痛かったに違いない。 根性焼きと同じで、傷害罪に問える内容だろう。 神島たちは、吉田を新たないじめのターゲットにしたのだ。 その時、フェンスの上にいたカラスが突然鳴き出した。 カラスの鳴き声が気に食わないのか、澤田は急に不機嫌そうな顔つきになる。 「邪魔だ。どっか行け。ここはお前の居場所じゃねえんだよ」 澤田はフェンスを勢いよく叩いた。 突然の衝撃音に驚いたのだろう。 カラスは黒い翼を広げると、空へ飛び立っていった。
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