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ふと、目の端に、白髪の老人が見えた。
第一展示室の方を横切ったようだ。
縋るでもなく、杖をつき、帽子を被った老人。
此処は関係者以外立ち入り禁止のはずだ。
博物館の人間なのだろうかと思ったとき、
「なに見てるの、悠紀ちゃん」
と伊集院に呼びかけられ、振り返る。
「今、あっちにお爺さんが……」
「えっ? 誰も居ないけど?」
そんな莫迦なと思ったが、振り向いたそこにはもう誰も居なかった。
「悠紀ちゃん~、こんなとこで怖いこと言わないでよね~。
そりゃ死体の副葬品にばかり囲まれてるとそんな気分になるけどさ」
と伊集院は怖がって見せる。
目の錯覚だったんだろうか。
伊集院の位置からは見えていたはずだ。
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