愛と義の間-徳川家康-

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それから更に数週間経つと、宿の近くに耕していた土地も立派に使える畑となり、 そして江戸城の方も無事に補修作業が終了した。 家康は政宗の家臣達に報酬を沢山渡し、 おまけとして伊賀から持ってきていた赤穂の塩もあるだけ手渡してやった。 「これでようやく本拠地に身を置けるね」 「ああ、城壁も頑丈に作り替えてもらったし、 半蔵達の意見も取り入れて籠城に有利な様々な仕掛けも付けてもらった。 これで三成が攻めてきたとしても互角に渡り合える。 ーーー単独軍だったらの話だけど」 二人は新しくなった江戸城の中でゆっくりと腰を落ち着け、 外の風景を見ながら話し合った。 「三成側もきっと色々なところと手を結んでいるはずだよね。 俺たちが他国と結んでいるのはあくまで協力して政治をするためだけど」 「三成は戦における智略家だからな。 あいつは戦のない時代になれば生きる場所を失う。 是が非でも俺達と戦いたいと思ってるだろうね」 「…家康は、戦いたいと思ってる?」 「無駄な戦はしたくないけど、向こうが攻めてくるならそれなりの対応は取るつもり」 「でも、向こうはいくつもの大名と共に攻めてくるかもしれないよ? ーーー史実どおりなら、間違いなくそうなる」 光太郎が思っているのは1600年に起きたと言われる関ヶ原の戦いのことだった。 家康率いる東軍と、三成率いる西軍に分かれて 全国各地で大名達の戦いが繰り広げられるのだ。 「…ここまで秀吉の死期を除けば全て史実どおりに進んでる」 「だからといって、次も必ず史実どおりになるとは限らないだろ?」 「家康は未来のことが不安じゃないの?」 光太郎は、悠然と構えている家康のことが不思議でならなかった。 「…不安ばかり抱いていても先に進めなくなりそうだろ」 「それは…そうだね…」 「それに俺は、前も言ったかもしれないけど、 あんたと一緒なら全て上手くいくと思っている」 「そう思ってくれるのは嬉しいけど」 光太郎がそう言いかけた時、従者が二人の元へやって来た。 「家康様、天海殿! 伊達家当主政宗殿がお見えです!」
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