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今度はもっと深く口付けて……
重なる彼の唇が薄く開く。
だから、ゆっくりと自分の舌をその中に進めて、
ぎこちない動き。
それはすぐに彼の舌に攫われて――
「んっ!」
体勢は簡単にひっくり返されて、ヒナの体は彼の下に。
「不合格」
「はい!?」
「濃厚なのっつーはこういうのを言うんだよ」
「――っ」
押し当てられる唇、
乱暴に割ってはいる彼の舌は、彼女の口内を容赦なく犯していく。
ただのキス。
だけど『濃厚』なそれはヒナの思考を奪い去ろうとして――
「――だめぇ」
「どうして?」
なんとか彼の胸を強く押す。
僅かに残った理性で。
「ブランチ、作ったんだもん」
昨日から用意した料理。
どうしてもそれを食べて欲しくて。
「食べて」
「……ヒナを?」
「ブランチだってば!」
そう叫ぶヒナにヒロキは声をあげて笑った。
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