第1章

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34/生と死3 特別機機内 午前11時16分  <ヒュドラ>事件対策本部…… 米国政府専用特別機は、それ自体が大きな移動作戦基地であり、政府の執行機関でもある。そして日本上空を、どこに降りるわけでもなく大きく旋回していた。どの空港でも状況に応じて降りられるためにだ。  この特別機の主が、<ヒュドラ>事件対策本部長で捜査、軍事、政府対応を一任されたFBI・NY支局長コール=スタントンである。本事件に関しては、米国大統領の代理といっても支障ない権限を持っている。  事件が大きく動いたのは日本時間午前11時を過ぎたあたりからだ。核兵器、ロシアのテロリスト、カミングスとの接触、中国潜水艦…… 立て続けに重要事案が持ち上がり、捜査の指揮や日本政府との応対も激しくなっていたところだった。  慌しくなったところに、突如本事件のため沖縄上空で稼動していた人工衛星が機能不全になったという報告を受けた。そしてユージと英国海軍所有の特殊工作船との交信も途絶えた。 「クラウディア号で爆発が起きたようです」  様々な情報が行きかう中、臨時秘書官がそう告げた。 「ただの爆発ではありません。どうやらEMP爆弾が使用された模様です」 「EMP……!? EMP爆弾だと!? それで衛星が破壊され、クロベたちとも連絡が取れなくなったのか!? 被害は!?」 「部隊を移送用したヘリ二機は墜落。監視衛星機能停止。突入した部隊がどうなったかは分かりませんが、爆発による直接ダメージはないと思われます。ただし、各種電子機器兵装は全て使えませんし、こちらからの指令も届きません」  EMP爆弾…… 電磁パルス爆弾は破壊兵器ではない。電磁波爆発を起こし、電子装置は全てを焼き潰してしまう。上空にあった人工衛星から、携帯電話に至るまで全ての電子機器は破壊された。おそらくクラウディア号ももはや船としての機能はなく、ただ浮かぶ鉄の箱でしかない。 「EMP爆弾を開発できるテロリストがあるとは思えんが」  核兵器開発のように材料調達やテストが困難な兵器ではないが、高度な科学技術が必要で予算も掛かる兵器だ。  米軍でも秘密裏に所持しているが核兵器並に厳重管理されているし、核兵器より新しい最新兵器だから勝手に盗み出したものではない。開発した場所があるとすればハミルトン社だろう。  だが今はそれを追及している場合ではない。
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