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しんしんと降り積もる雪。
この地方では滅多に降らない激しいそれに、目の前の愛しい女性は自身の手の中の分厚い本から視線を上げ、窓の外を眺めていた。
「ひどい雪ね…あの人はここへいらっしゃるかしら…」
私の気持ちを知ってか知らずか、そう言って彼女は物憂げな視線をこちらによこした。
この雪は、私の気持ちだ。
彼女の愛しい人の足を止めているのは私の積もり積もった思いだ。
そう、考えるのは傲慢だろうか。
「そんなに雪ばかり見つめて…今あたたかいお茶をお煎れ致しますね」
もっと雪を、もっと私の思いを見つめればいい。
もっと雪に、もっと私の思いに困ってしまえばいい。
この雪よりも深く、こんなにも私の心の中にあなたへの思いは降り積もっているのです。
「…このお茶が冷めないうちには無理そうね」
ああどうか、こんな醜い私には気がつかないでください。
雪よりも深く
いつまでも愛してる。
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