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電子カードをかざして改札を通る。
ここから俺のマンションまでは徒歩15分といったところだ。駅から5分ほど進むと、人通りがあまりなく街灯も少ない通りに至る。もし俺はまりえが一人で住んでいたら、確実に一人で帰るなと言ったとは思うが、だがしかし俺は男の子である。
いくら見た目をごまかして可愛くなったところで、どうせ俺はまりえじゃない。
なのに毎度毎度、ご苦労なことだよな、と。
いつもこの時間帯、不機嫌そうな顔で隣を歩いてくれる男がこんな俺にも存在していたのである。
【人気男の娘モデル萩ちゃんの誤算】
駅近くのコンビニを通り過ぎたところで、振動したスマホに気が付いて鞄から取り出す。なんでスカートにはポケットが付いていないんだろう。女装するにあたって目下の俺の不満はそこだ。女の子が持つ小さな鞄には、魔法かと言わんばかりの見事さで、化粧品やらスマホやらその他もろもろが収納されているのはすごいと思うけれども。
ズボンにスマホ、財布。それだけで身軽に出かけられないのは、何故なのだろう。
「って、げ。また藤吉かよ。粘着質な野郎だな」
光っていたのは、藤吉からの通知だった。反射のようについて出た減らず口ほど内心自分が満更でもないと自覚済みなのが手に負えない。
奴が世話を焼くのは、奴自身の正義感に寄るものでしかないと知っているのに。
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