プロローグ

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プロローグ

000/  僕が神様に何かを祈るのは、猛烈な腹痛に見舞われたその時ぐらいなモノだけど、間宮千早の場合はそれが毎朝の日課なのだという。  間宮とは小学校低学年からの付き合いで、幼馴染と呼ぶには自宅の距離も、心の距離も離れ過ぎてはいたが、お互いにあまり友達が多くないという事もあって、何かと重宝する存在だったのは確かだ。  例えば修学旅行や卒業旅行では彼女と大半の時間を過ごしたし、卒業アルバムを見返してみれば、僕が写り込んだ写真には必ずと言っていい程に、眉間に皺を寄せた間宮が隣にいた。  しかしだからといって、そこに恋愛感情が挟まる余地はこれっぽちもなく、お互いがお互いを疎ましく思っていたのも、またどうしようもない事実である。  そんな僕らの関係は、中学生になっても当たり前のように続いていて、もしかしたらこのまま高校でも大学でも僕らは傷を舐め合い続けるのではないかという僕の危惧は、しかし杞憂に終わった。  ある日唐突に、間宮が終わらせたのである。 「来須。私と一緒に飛ぼう」  その日の天気が晴れだったのか、雨だったのかはもう覚えてはいないけれど、その日の間宮の横顔と握った手のひらの感触は今でも記憶に焼き付いていた。
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