第6章

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寝台の前で歩みを止めた五人。キングがメンディーに視線を向けると、彼はその両手を胸の前で組んでいた。その手にはすでにナックルが装着されている。メンディーがゆっくりと一歩前に出るとキングは静かに頷いた。 『勇者よ。タカヒロを目覚めさせてくれ』 キングの声は穏やかであった。まるでタカヒロが目覚めることが、もう分かっているようだと思わされる程に… メンディーは結晶の前に立つと大きく息を吐いた。そして神経を集中させ目の前の結晶をじっと見つめる。結晶に走る亀裂は彼の肩の位置。まるでメンディーが一番力を込めやすい場所に意図してつけられたもののようにさえ感じられる。 『ふーーー』 メンディーは一度目を閉じるとさらに深く息を吐いた。そして目を開けると同時に結晶に向かってその拳を突き出した。 『はぁっーーー!』 彼の気合の声と共にナックルが結晶にぶつかる。誰もが息を飲み、結晶をじっと見つめている。メンディーは動かない。残った力をそのまま結晶に届けようとしているかのように…
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