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それは突然の事だった。
『佳奈(かな)が入院した。お前に会いたがってるから、来てくれないか?』
昔、高校生の時に、一時期だけ在籍した全寮制の男子校。
其処で、ルームメイトで親友で、何時も一緒に居た奴からのメール。
佳奈ちゃんはその妹で、そいつの家に冬休みに遊びに行った事があった時に紹介された。
それからは、誘われるままに春休みにも遊びに行ったりしたっけ。
当時、帰る場所の無い俺に何時も、泊まっていけ、と家族で親切にしてくれた。
彼の父親は忙しくて顔を合わせた事は無かったが、俺の話は聞いていた様で。
たいしたお構いは出来ないが是非とも何泊でも泊まっていってくれ、と手紙を貰ってしまったのだが。
それでも、とある事情により、用があるからと、俺は泊めて貰う事なく、何時も寮に戻っていた。
そのせいで同室のそいつも寮に戻るとか言い出すから、甘えられる内に親に甘えておけ、と捨て台詞を残して1人で帰ったものだ。
俺の両親が他界していた事を知る彼は、苦い顔で実家に残っていたっけ。
それでも俺を独りにしたくないと、早めに戻ってきてた優しい奴。
が、ある事件が起こり。
心を壊しかけた俺は、運良く俺を拾ってくれる人が現れて、転校した。
親友を裏切る様に、何も言わずに。
それ以来、会ってもいないし、時々来るメールに、気が向けば生存報告を返すだけだったのだが。
こんなメールを貰ったら、放置出来ないじゃないか。
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