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「大丈夫!わかってるから!!」
章が口を開きかけたタイミングで、由香は叫ぶようにそう言った。
「谷口がみのりを好きな事、わかってるよ。だってあんなに……みのりには態度が違うし、みのりと居る谷口は本当に楽しそうだし生き生きしてる。そんな人を見つけたんだって思って、嬉しいよ」
章は由香の言葉を頭の中で繰り返し、そしてコクリと頷いた。
「ただ……」
「…………」
「それが私じゃなかったのが、くやしい」
「…………」
「みのりは良い子だから……文句のつけようがないのが……すっごい悔しい!」
由香は身を折りそう叫ぶと、はぁーと思い切り息を吐きだした。
「……あー、スッキリした」
「っ、」
「いつか、言ってやろうって思ってたんだよね。谷口がみのりの事好きなんだなって思い始めてから、さ」
由香は本当にスッキリした顔で笑う。
章はそんな由香に目を伏せた。
「谷口が、心の無いロボットみたいな氷点下男じゃなくなって、良かった」
「…………ひどいな」
「ふふっ。では、ひどい事を言ってしまったお詫びとして、心を見つけた谷口くんに“大変なお知らせ”してあげましょうか」
章を覗き込む様な体勢でそう言った由香は、ちらりと自分を見た章に意地悪くにやりと笑って見せた。
「今日みのりと一緒に作業してる、E組の坂本。あれ“男”だから」
「……!?」
「坂本かっこいいしね。実はみのりのこと可愛いって……」
章は由香が言い終わらないうちに教室を飛び出した。
由香は血相を変えて飛び出した章の後ろ姿を茫然と見つめ、それから苦笑を洩らす。
「……ま、これくらい、いいよね」
由香は呟くとぷっと吹き出した。
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